【鈴木先生から】( 二〇二三年七月二十日)
お盆の法話でその由来である「盂蘭盆経」のお話を聞いた方も多いことでしょう。
盂蘭盆のお話のあらましはこうです。
~ お釈迦様の十大弟子の一人目連尊者お弟子が神通力で亡くなった母親の姿を見たところ、母親は餓鬼の世界(餓鬼道)に堕ちており、逆さ吊り(「ウランバナ」の音写語で「逆さ吊り」)にされて飢えと渇きに苦しんでいたそうです。
嘆き悲しんだ目連尊者がお釈迦様に、何とか母親を救いたい、と相談したところ、
自分の力は母親だけのために使うのではなく、同じ苦しみを持つすべての人を救う気持ちを持つように諭されたので、目連尊者は修行僧たちに、食べ物や飲み物、寝床などを捧げたところ、
修行僧たちは大変喜び、その喜びが餓鬼の世界まで伝わり、母親が救われたということです。 ~
では、目連尊者のお母さまはなぜ餓鬼道に落ちていたのでしょうか?
それはこういうことでした、、、
~ 目連尊者と母が暮らす家はインドの大きな通りに面しておりました。
暑い日差しの下、長い旅でのどの渇きをかかえた修行僧がその道を通りかかったおり、
目連尊者の家の土間にある、たっぷりと水をたたえたカメが目に入りました。
渇きを抑えられない修行僧は土間に入り、目連尊者の母にお願いしました。
「そのカメの水を一杯でよいから、いただけないだろうか?」と。
すると母は「これはわたしの大事な息子、目連に飲ませるための水なので分けることはできない」と断りました。~
それが、目連尊者の母が餓鬼道に落ちた理由だったのです。
蜘蛛の糸の逸話をご存じでしょうか?
小さな蜘蛛を救ったことで、助かる道が開けることもあれば
目連尊者の母のように、小さなことで餓鬼道に堕ちることもあるということですね。
仏教では、「利他(りた)」という考えがあります。
利他を心がけると、自分にも利(喜び・幸せ)が返ってくる。
自分も他の人も喜び・幸せにあふれる道が利他です。