無宗教の友人葬や音楽葬など、新たな形のご葬儀が注目を集めています。
最近インターネットの普及とともに僧侶派遣業もそのひとつでしょうか。
そのようなサービスが登場した背景を辿っていくと、
人口に対する寺院の数が圧倒的に不足している都市部の問題が挙げられます。
1960年代、地方の農村から仕事を求めて多くの人々が都会に集まりました。
人はどんどん都市部に流入してくるのに
新たな寺院が建築されることはほとんどありません。
東京が江戸と呼ばれていた時代、江戸幕府は一向一揆などを恐れて
特に浄土真宗の寺院建設を制限していましたために、
人口の割に寺院が少ない都市だったという事情も〝寺院不足〟に拍車をかけました。
古い寺院は昔からの信徒や檀家を大切にしなければなりません。
新たな信徒を受け入れるといっても限界があります。
さらに墓地を造成する土地もありません……。
そのような状況で都市部では、無理にお寺と繋がりを持つ
必要性を感じない方々が増えていきました。
その方々がご家族を亡くしたとき、自らが葬儀を執り行っていただける
縁の無いお寺を探すよりも、お葬儀を手配される葬儀社などに
寺院を紹介してもらうことを選ぶようになりました。
葬儀社は、ご葬儀を取り仕切るために喪主から葬家から依頼のあった
ご僧侶を紹介する必要に迫られ、それらの事情を理解して
協力してくれる寺院に依頼するようになりました。
そうして寺院が信徒や檀家でない葬儀社などの紹介する葬家に紹介され、
お経をあげることが定着していき、俗にいう僧侶派遣の原型が定着していったのです。
一方、地方には、また別の事情があります。
都市部に働き手を奪われた地方では過疎が進みました。
私が知っている滋賀県のある集落では、120戸に対して寺院は5軒。
父親が住職を、息子が副住職を務めており、副業を持たなければ食べていけない。
そのような寺院がたくさんあります。
都市部では寺院も僧侶が足りないのに、その一方で地方では……
都市も地方も、需要と供給のバランスが崩れてしまっているのです。
そのような背景の中、今度は地方で生活できない寺院の副住職が東京に居を構え、
そのようなご僧侶を葬家に送り出す、
インターネットを中心とした僧侶派遣業を専門とする業者が現れたのでした。