希薄になっている人と人とのご縁を結び直すにはどうすればいいのか、考えさせられる場面にしばしば出くわします。
東京御廟では、いま年間約800件ほど新規に利用される方がいらっしゃいます。けれども、2年と待たず約1%ほどの方が転居されていてご案内などを送っても返送されてきます。そのような状況を鑑みると、今後、都会では無縁墓が増えていくことと感じます。
私たち東京御廟では、ご契約者さまご本人が亡くなり、お墓を継ぐ人が現れない場合や音信不通になり管理料を長期間にわたって支払っていただけない場合でも、無縁になられてから5年間はそれまで通り、ご供養をさせていただきます。
そして5年が過ぎると永代供養に切り替えております。私たち光明寺は京都・宇治に霊園がございます。ご遺骨を合祀塔にお納めして光明寺が続く限り、ご供養させていただきます。また、東京御廟の本堂の須弥壇にもご遺骨の一部をお納めして東京でもご供養ができるようにしているのです。
対機説法という言葉があります。意味は、相手に応じて分かりやすく仏法を説くこと。
現代において必要とされているのが、対機説法なのではないかと感じます。
かつては家のための、一族のための仏教が、いまは家族のための、個人のための仏教へと変わっているように思うのです。
檀家制度に代表されるような旧来のスタイルではなくて、それぞれの人々の暮らしやライフスタイルに合わせて、ご供養し、仏法への思いが心のなかに芽生えたところで、お弔いの意義や世の中との関わり方を説いてまいれれば、と考えております。
寺院もそれぞれの僧侶も伝統を中心に置きながら、時代に寄り添わなければなりません。
搬送式の納骨システムを取り入れた東京御廟は、多様化する時代の産物のひとつです。もちろんすべての方々の思いに応えられるわけではありませんが、3年半、町屋光明寺・東京御廟の住職を勤めて参りまして、いまの時代に必要とされる施設だと実感しております(続く)。
取材・構成/山川徹